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「維新銀行 第二部 払暁」~第2章 クーデター計画(10)
経済小説
2012年10月24日 07:00

<谷野頭取包囲網(10)>
 沢谷が栗野会長から聞いていた通り、5月23日(金)に開催された臨時決算取締役会で、栗野会長、沢谷専務、石野専務、吉沢常務、松木取締役、堀部取締役の6名の再任と、山本取締役が退任し後任に原口俊也福岡支店長の取締役昇格の内定が公表され、6月下旬に開催された株主総会で正式に承認された。
 
sora_2.jpg 4月28日に行なわれた谷野頭取罷免の話し合い以降は、谷本や栗野の指示に基づいて、沢谷が個別に各取締役に連絡をする方法を取ることにしたため、谷野頭取罷免の『TK計画』は、谷野陣営にその動きが漏れることはなかった。

 再任を果たした会長の栗野は、いよいよ谷野頭取罷免に向けて動こうとしていた矢先、突然病魔に襲われた。栗野は8月の盆前から右手に痺れを感じるようになったが、痛み止めを飲んでいれば、そのうちに治るだろうと思い放置していた。しかしその間次第に痺れが激しくなり、盆明けの18日朝、目覚めると右手は痺れたままで握力がなくなり、左足も攣った状態で歩くことも出来なくなった。
 慌てて自宅近くにある厚生会病院の神経内科に駆け込んで精密検査を受けた結果、原因不明の神経の変性により、筋力低下と筋委縮が進行して筋肉に麻痺が広がっていく、「筋委縮性側索硬化症」と診断され、即日入院となった。

 栗野会長入院の知らせは、行内にまたたく間に広がった。今まで対外的な行事は栗野会長が受け持っており、緊急措置として入院の間は、谷野頭取や本部役員が交代で代理出席することが決まった。医師からは一カ月間の入院を要すとの診断書が提出されはしたが、神経性の病気であり治癒するまでどれだけの期間を要するか、わからなかった。

 行内には動揺が広がると同時に、今までも影の薄かった栗野会長はこれで終わりだとの風評も流れるようになり、谷野頭取の存在感が増すにつれて、『TK計画』は実行が危ぶまれる重大な危機に見舞われることになった。

 そんな矢先の8月下旬、維新銀行と長年トラブルとなっていた人物が、ある支店の顧客名簿の写しを大手新聞社に送り付け、流出をリークする事件が発生した。顧客情報の漏洩を受けて、谷野頭取は記者会見に臨み、
「今後この様な事がないよう、綱紀を粛正し情報管理の徹底を図っていきたい」
 と、述べ陳謝した。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。

▼関連リンク
・「維新銀行 第二部 払暁」~第1章 谷野頭取交代劇への序曲(1)


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